2016年7月5日火曜日

Pain medicine @ MGH その2

Keigitoです。帰国を迎え少しほっとしながら、機内でこの記事を書いていました。
前回に引き続き、pain medicineのことを書いていきます。

この実習で学んだ・実践したこと
 外来では問診、身体診察、AttendingへのプレゼンテーションといったFOCUS(派遣前トレーニング)で学んだことをトライできました。疼痛という主訴は共通しているので話の流れを作りやすく、問診の良い練習になりました。学生であっても協力的にお話をしてくれる患者さんが多く、大変ありがたかったです。様々な人種や背景を持った患者さんが来院していたことや、時に通訳を介した診察が行われていたことも印象的でした。事前に予約すれば通訳の人が来ますし、電話のような装置を使って遠隔で通訳をするサービスもありました。患者さんには通訳の追加料金はかからないそうです。
再診の患者さんが来たときはほぼ見学でしたが、医師と患者さんのやりとりを聞いているだけでも医師・患者間コミュニケーションや治療戦略について学べることが多かったです。毎日沢山の症例を経験できることも、病棟中心の実習とは違ったメリットだと思います。

 ペインクリニックではモルヒネ、オキシコドンといった医療麻薬を扱うこともあり、薬物依存の問題が切り離せません。処方されて余った医療麻薬が路上で売買され問題になっていること、アメリカでは麻薬の処方が多すぎ、逆に日本は少なすぎると言われていることを知りました。以前トヨタの役員が日本にオキシコドンを許可なく持ち込み逮捕された話をAttendingにしたところ、日本はそんなに厳しいのかと驚いていました。
州によって解禁されてきている医療大麻に関して、患者さんから質問が出ることが何度かありました。
マサチューセッツ州では医療大麻は許可制で、許可証をとれば処方してもらえるそうです。しかし実際に処方するドクターは少なく、ほとんどのドクターはエビデンスが十分でないこと、投与量の基準や安全性が確立されていないことから、処方していないとのことです。

この実習はこんな人にオススメ
疼痛に関心がある
 これを選んで間違いありません。4週間通して多様な症例を思う存分見られると思います。

沢山の症例を見たい
 外来で次々と患者さんがやってくるため、多くの症例を目にすることができます。カルテのパソコンを使って患者さんの紹介理由を確認したり、過去の経過や他科の治療を追ったりすることも勉強になります。大学では外来中心の実習はないと思うので、外来でたくさんの患者さんを診たいという人にオススメできます。

患者さんとコミュニケーションをとりたい
 各チーム一日最大3名ほどの新患患者さんがいらっしゃいます。学生が新患患者さんへのファーストタッチをできるので、問診や身体所見の良いトレーニングになります。(患者さんが希望されない場合や、事情がある方だと見学だけになることはあります。)私は患者さんとのコミュニケーションに苦手意識がありましたが、この一か月でかなり克服できました。

麻酔科に興味がある
 日本でもそうだと思いますが、ペインクリニックは麻酔科の一部門です。ここで働いているドクターも多くが麻酔科医で、あとは神経内科、精神科、リハビリテーションの先生が若干名という構成でした。将来麻酔科を考えているなら、麻酔科の仕事の一端を見るという点で勉強になると思います。麻酔科の先生方は日によっては麻酔をかけに行くこともあります。私はお願いして手術室見学をさせて頂きました。希望すれば麻酔導入なども見せてもらえるかもしれません。


ここで実習をするデメリット
 行ってから「こんなはずでは…」とならないために、デメリットと感じた点を紹介します。ここでの実習は全体的にとても良かったということは念を押しておきます。

スタッフの交替
 Attending約15名・Fellow約7名が日替わりで診療を行っていて、同じ医師につくことはあまりありませんでした。様々な医師と知り合い、それぞれの診察スタイルを知ることができた一方、同じ先生から継続的な指導を受けたり、取り組みを評価してもらい推薦状を頂いたりということは少し難しいかもしれません。ただ、お願いすればスケジュールを調整して特定の先生につく回数を増やせる可能性はあります。

カルテと論文へのアクセス
 学生はカルテに書き込むことができず、自分で診察をしても記載はできませんでした。また、UpToDateを使うことができて嬉しかったのですが、有料の論文にはアクセスできず、本学のVPNを利用して自宅で論文を読みました。ハーバードの学生はハーバードのIDを使って論文にアクセスしているそうです。

レクチャーやまとまった指導機会は少ない
 他の科をまわった同級生にきくと、ランチタイムにレクチャーがあり勉強になったという話を聞くのですが、ここではレクチャーは少なかったです。時々朝や昼間のレクチャーに行けることはありましたが、学生の参加はあまり想定していないようでした。私の場合6月の放射線科でレクチャーが沢山あったこともあり違いを感じました。また、外来は日によってはかなり混んでいて、先生方も次々と診療をしているので、そういう時はタイミングをみて質問するのがやっとであり、しっかり教えてもらうことはできませんでした。中には忙しくても合間合間に解説をして下さる先生もいらっしゃって大変ありがたかったです。

マニアックすぎる?
 痛みを生じる疾患は多岐にわたっていますし、治療にもバリエーションがありますが、それでも4週間まるまる痛みだけを扱うことはマニアックすぎると感じる人もいるかもしれません。ただし、痛みは神経内科的なこと、整形外科的なこと、精神科的なこと…とオーバーラップしているので、学ぶことは広げられると思います


最後に
 シラバスでどの科を選ぼうかと考えた時、せっかく学外に出るのだから大学にはなかった選択肢を選んでみようという気持ちがありました。外来中心の実習であることはあまり意識していませんでしたが、結果的に今までに経験した実習と違ったことを沢山できて良かったです。

今回も文字ばかりの重たい記事になってしまいました…笑。
忘れないうちにと欲張って書いてみました。少しでも参考になったでしょうか。


文責 Keigito


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